オープンサイエンス・パーク千歳「生態系サービスがもたらす、持続可能な農業とインバウンド」を開催
Date:2019.08.23
8月2日(金)、サケのふるさと千歳水族館学習室において、今年度第一回のオープンサイエンスパーク千歳 「パッケージングからインバウンド、国土強靭化まで ~生態系サービスがもたらす、持続可能な農業とインバウンド~」が開催されました。盛夏の中、産業界、行政、市民を含む約50名が参加し、持続可能な経済活動の視点から農業とインバウンドの活用にあたって、千歳市の現状と課題について、熱く議論されました。
まず、元滋賀県立大学副学長で環境経済学者の仁連孝昭名誉教授による基調講演では、自然の生態系(エコシステム)において成長・極相・下降・回復という律動があるように、多様なネットワークで組織されている人間社会においても、例えば経済活動に見られる、成長段階、成熟段階、撹乱による下降段階、新たなレジームの創発段階、へと律動していること、そして、私たちが今どの律動段階に居るのかを認識しその段階に適した対応をしなければ持続性が保たれないことを、地球温暖化や土壌変化、生物多様性の喪失などが経済に及ぼしていることをもって紹介されました。
NPO法人アグリコミュニティ千歳理事長の藤田和徳様からは、縄文時代前期から不老長寿秘薬のハスカップが自生する勇払原野の原風景再興をめざし、農業・環境気象観測システムなどを用いたスマート農業による新ビジネス創出の取り組みが紹介されました。千歳市観光スポーツ部観光企画課課長の松原崇人様は、新千歳空港年間利用者が2300万人を超え、110万人が千歳市に宿泊する現状において、Wi-Fiの設置や他言語対応、キャッシュレス化などの課題、体験型観光への取り組みなどについてお話をいただきました。
後半は、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員の高梨琢磨様から、農薬を使わない物理的害虫防除技術についての研究開発事例が紹介され、昆虫の振動挙動にヒントを得た生物模倣技術が有効であることが示されました。続いて、公立千歳科学技術大学の山林由明教授より、通信技術を用いた農業のスマート化に向けて、大学キャンパス内で行っている研究成果の一端を紹介して頂きました。
シーズニーズマッチングのためにモデレーターである下村教授から、大量生産・大量消費のトレンドをどう超えるか?、スマート農業は生態系への影響はないのか?、「“日常”と“非日常”」を意識したスマート農業のデザインとは?、に関する課題が問われ、公立千歳科学技術大学の曽我教授より、道内一の生産量を誇る鶏卵のブランド化を例にして、サービス工学におけるユーザービリティエンジニアリングの尺度である、「効果」・「効率」・「満足度」を用いた解析が有効性を持つであろうことが紹介されました。
今回も多くの方にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。なお、今回の催しの様子は、8月6日の千歳民報に掲載されました。