【千歳学ことはじめ vol.12】インバウンドと国土強靭化
Date:2019.02.13
氷濤まつり、流氷、そして雪まつりの季節である。本道のインバウンドは順調だ。
2018年の新千歳空港利用の旅客数は前年を上回る2331万人、5年連続して増加している。
北海道の魅力は、雄大な自然と豊かな自然がもたらす食である。経済学では、自然が人類活動にもたらす恩恵を「生態系サービス」と呼んでいる。
雪や温泉は、北海道のインバウンドを支える生態系サービスである。
生態系サービスをもたらす「自然資本」の根本は、地球上の自然現象である。であるがゆえに、恩恵だけをもたらすわけではない。温泉は火山活動あってのものであり、火山を作る地球の造山運動は地震や津波をおこす。
雪は時として、雪崩や交通障害などの雪害をもたらす。
そもそも、「恐いもの地震、雷、火事、おやじ」の多くは自然現象である。“おやじ”は親父ではなく、台風を意味する“大山嵐(おおやまじ)”が鈍ったという説がある。
避けることのできない自然災害に対して、被害を最小限に抑え、迅速な復旧を可能とする復元力を持つための不断の、そして普段の備えが「国土強靭化」である。
昨年の本欄10月17日号で紹介した妹尾堅一朗さんの言葉を借りれば、「“日常”(平常時)と“非日常”(災害時)の営為が共生する“スマート”(かしこい)社会」を目指すことで、この国の強靭化が図れるのではないだろうか。
シーニックバイウェイという取り組みがある。
シーン(景観)とバイウェイ(脇道)を組み合わせた造語で、ドライブ観光による地域活性化の促進を図りながら道路網を整備する施策である。脇道を整備しておけば災害時の迂回路になる。フェイルセーフという考え方である。
千歳科学技術大学 教授 下村政嗣
出典:千歳民報コラム「ゆのみ」(2019年2月12日号)
※この記事は千歳民報社の許可のもとに転載しております。