【千歳学ことはじめ vol.13】観測史上最低

Date:2019.03.08

【千歳学ことはじめ vol.13】観測史上最低

心配していた、冬季の大地震に見舞われた。出張先の仙台で、ススキノのタクシー乗り場の長蛇の列をニュースで見たときに、思わず、雪まつり期間だったらもっと大変だと思った。雪まつりも佳境の2月9日、本道は観測史上最強の寒波に襲われた。道内173地点の観測データにおいて、最低は陸別のマイナス31.8度、札幌はマイナス13.1度、千歳はマイナス25.4度で観測史上最低の気温であった。

今冬期の寒波は世界的な現象で、ヨーロッパ、北アメリカ、そしてハワイでも記録的である。地球は温暖化しているにもかかわらず、なぜ、記録的な寒波に襲われるのであろう。地球温暖化を否定しパリ協定から脱退した某国の大統領ですら、「地球温暖化はどうなったんだ?戻ってきてくれ、必要なんだ!」と呟いているらしい。地球は温暖化ではなく寒冷化しているのだろうか?もちろん、答えはノーである。逆説的ではあるが、温暖化であるがゆえの極寒だと気象学者は言う。アメリカ海洋大気庁(NOAA)はポンチ絵を使って、海水温が上昇することで水蒸気が増加し吹雪が増える因果関係を判りやすく説明し、大統領の理解が間違っていることを諭している。さらに気象学者は、「極渦(きょくうず)」と呼ばれる北極圏に形成される強い冷気の渦状の流れが、温暖化によって北極海の氷が融けることで局地的に形成された「ホットスポット」によって乱され、渦の形が変化することで寒気がハワイにまで到達した可能性を指摘している。

期せずして2月18日、気候変動(Climate Change)と地球温暖化(Global Warming)に関する論文を世に知らしめた米国コロンビア大学元教授のウォーレス・ブロッカー博士が亡くなった。その論文は、1975年に発表されている。年配の方はご存知かと思うが、エルンスト・シューマッハの「スモール・イズ・ビューティフル」が出版されたのは1973年、高度成長が終わった頃である。

千歳科学技術大学 教授 下村政嗣
出典:千歳民報コラム「ゆのみ」(2019年3月5日号)
※この記事は千歳民報社の許可のもとに転載しております。